フランス版1789を見たのですが、日本で上演されているものとはかなり印象が違うような気がしましたので、感想を書いておきます。
荒削りでちょっぴりラディカル
やはり、宝塚・東宝版と比べると、ストーリーの荒さが気になります。
例えば、革命家3人とロナンが対立するシーン。フランス版はこんな感じです:
印刷所でロベスピエールが理想を語る。それに対してロナンが「立派な演説だ、本当に立派だよ!言葉だけはな!」「言葉で世界が変わるとでも思ってんのか?」とふっかけます。するとデムーランが「暴動でも起こすつもりか?農民の夢だな!」と言ってロナンと険悪な雰囲気になり、見かねたダントンが「我々の革命はお互いへの尊敬に基づいているんだぞ!仲直りしろ!」と仲裁。そして2人は握手して、「じゃあ働くぞ!」となってHey Haが歌われます。
え、もう仲直り?と少し拍子抜けしました。このあたり、宝塚・東宝版はもう少し丁寧に描かれていますよね。
ただ、フランス版ではデムーランがこの時点では暴動を否定しているという点が面白いですね。この時点では暴動に否定的だったのに、なぜバスティーユへの暴動を促すのか、このあたりがフランス版ではよく読み取れなかったのですが(最初は議会でちゃんとやろうと思ったけど、国王が妨害してきたからもう暴力しかないと思ったのかな?しかしそれは論理の飛躍というか、あまり理由になっていないような気もするので、もう少し明確な理由づけがほしいところ)、そう考えると、バスティーユ陥落という歴史的には華々しいシーンが、悲しさとともに語られるというのが納得のいくような。
それから、とにかく民衆の暴力的な側面が強調されています。ロナンの先ほどのセリフも然り、ソレーヌもパンを求めてパン屋を襲撃します。このシーンは宝塚にはないのですが、東宝版にはありました。でも東宝版でも、ソレーヌが襲撃した後、ダントンたちがやってきて「弱いもの同士で争っても意味がないから仲直りしろ」と言われて終わってしまいます。この仲裁のシーンって必要なのかしら?ダントンたち男性ブルジョワ革命家が仲裁することで、結局は女性は無力、短絡的、みたいな印象になりますし、だったらなんでバスティーユ襲撃は正当化されるの?という疑問もわいてきます。
フランス版では、ソレーヌの襲撃は完全にベルサイユ行進として描かれていて、ダントンは仲裁にきません。そのかわり、アントワネットが出てきます。時系列はガン無視ですが、こういうのは嫌いじゃないです。また、このシーンがあることによってフランス革命には女性の革命家もいた、ということが示されていて良いですね。ソレーヌが少しテロワーニュ・ド・メリクールっぽい。
キャラクター像の違い
2番手はペイロール?
フランス版を見てみるとわかると思うのですが、フランス版1789は群像劇といった色合いが強いです。そして、もしフランス版1789を宝塚で忠実に再現しようとすると、2番手はアルトワ伯でもロベルピエールでもなく、ペイロールになると思います。
フランス版1789では、ペイロールは若い男性が演じています。実は、このペイロール役の方が本当はロナンを演じる予定だったのが、喉の調子が悪くてペイロールになったという経緯があるらしいです。
権力に抵抗するのがロナンなら、権力を振りかざすのがペイロールです。フランス版ペイロールはどこか自惚れのようなものを感じるところもあり、まさに悪役!フランス版1789では、アルトワ伯やラマール、ルイ16世はどこかお間抜けな感じで描かれているので、主人公ロナンの敵としてもってくるにはペイロールが最適だと思います。
しかし、小池先生は宝塚で上演するにあたって2番手をアルトワ伯に設定しました。ペイロールでも問題なかったと思うのですが、どうしてでしょうね?アルトワ伯が2番手だと、トップスターのロナンとオランプを取り合うことができるから?(実はフランス版ではオランプを狙っているのはアルトワ伯というよりもラマールなのですが)。フランス版1789ではアルトワ伯はめちゃくちゃ影が薄いので、なぜ小池先生は2番手をアルトワ伯に設定したのか気になります。でもこのおかげで美弥るりかさんの本領発揮が見られたので本当にありがとう!という感じですが笑
アルトワ伯よりもラマールが大活躍
フランス版を見たときにかなりびっくりしたのが、「私は神だ」を歌うのがアルトワ伯ではなくラマールだということ!しかも、「私は神だ」のシーンは、オランプの見る悪夢という設定になっています。
まあ、普通に考えて「私は神だ」とか言っている奴がいたら危ないですよね……。しかもフランス版の歌詞では、「私は神だ」の意味合いもかなりものすごいことになってます。これは宝塚には持ってこれません。
しかし、宝塚版での「私は神だ」は作中で1、2を争うほどの(?)名曲に仕上がっていると思います。「私は神だ」と言っても「そうですよね!」となってしまうほどの説得力をもっている美弥るりかさんに瀬央ゆりあさん、すごいです。これは宝塚ならではなのかな……と思います。
ダントンはおじさん
それから、ダントンは完全におじさん枠です。フランス版1789を忠実に再現するなら、ダントンを演じるのは別格の方かな?と思います。
フランス版1789では、ちゃんとダントンは「俺は結婚している」と言っていますので、ソレーヌとの仲もそこまで深まりません。宝塚版に慣れていると意外ですよね。
ミラボーの存在感がすごい
宝塚版1789には出てこないのですが、フランス版1789ではミラボーが登場します。そして彼の存在感がすごい。「誰のために踊らされているのか」のシーンでは、歌と踊りはロベスピエール主導ですが、ストーリーを駆動するのはミラボーです。
実際の史実を考えても、貴族でありながら平民議員となり、国王一家とも強いつながりを持っていたミラボーの果たした役割はとても大きいと思いますので、納得の存在感です。
それにしても、なんで宝塚版ではミラボーを省いてしまったんでしょうか。東宝版には出てくるけど、やっぱりそこまでの存在感はないし。
おわりに
こうしてみると、フランス版1789はかなり宝塚版とは違いますね。興味のある方はぜひフランス版も見てみてください!新しい発見があると思います!
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フランスでの初演版はこちら。宝塚・東宝版とはまた違います。
ミラボーの働きぶりについては、こちらの小説を読むとよくわかります。『小説フランス革命』は主役が入れ替わるのですが、1巻目の主役はなんとミラボー。それだけ彼がバスティーユ陥落に与えた影響は大きかったのです。
フランス革命の史実をおさえたい方におすすめの本。さくっと読めますよ!
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月組版↓比較にぜひ◎
東宝版。2つバージョンがあるよ。三部会のシーンが推しです。
フランスでの初演版はこちら。
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