フランス版1789感想②

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前回の記事の続きです。フランス版1789の感想を綴ります。

言葉が作品に統一性を与えている

前回の記事では、フランス版1789は宝塚・東宝版と比べてストーリーが荒削りだと書いたのですが、その代わり印象的な言葉の使用が際立っていました。特に、”danser”(踊る)と “peine”(悲しみ)という言葉。

danser

アントワネットは”Je mise tout”(全てを賭けて)で”je danse et j’oublie”(踊って忘れるの)と歌います。

一方、ロベスピエールの”À quoi tu danses ?”(誰のために踊らされているのか)では、”penser”(考える)と”danser”(踊る)という言葉が対のように使われています。

余談ですが、”À quoi tu danses ?”の歌詞が

“Puisque les jours sont fragiles Et les temps difficiles

 (日常は壊れやすく 時代は困難だから)

Puisqu’ils font le monde hostile Pour nous tenir dociles” 

(私たちを従順にするために 奴らは厳しい世界を作ったから)

(訳詞が間違っていたらごめんなさい!)

と、”puisque”=「〜だから」で始まるのがロベピらしいなあと思ってうれしかったです!しかも”puisque”は英語でいうところの”since”、つまり相手が知っている事情を話すときに使う言葉です。”parce que”ではなく”puisque”というのもめちゃくちゃ良いですね。

アントワネット=特権階級は踊りを自分のために使い、平民は権力によって踊らされている……。

「踊り」という言葉の効果的使用と実際のダンスの相乗効果によって、1789がミュージカルであることの意義が存分に引き出されていると思います。

peine

アントワネットの”Je mise tout”(全てを賭けて)では、”je noie ma peine dans l’ivresse du bonheur éphémère”(儚い幸せに酔って痛みを紛らわせる)。ここでの「痛み」は、彼女が孤独な王妃であるということです。

一方、”Pour la peine”(悲しみの報い)ではタイトルの如く、”pour la peine”(悲しみに報いるために)という表現が頻出します。

“Pour la peine”は1789のクライマックスを飾る曲でもありますから、ここで使われる”peine”という言葉をあえてアントワネットにも使わせているのは意図的なのかな?と思います。もし作者の意図を超えていたとしても、観客は気づくはずですから、無意識にやっていたとしたらそれはそれですごい。

1789のストーリーは荒削りな部分が気になりますが、その代わり、登場人物全てを結びつけるものとして”peine”という感情がある。バスティーユ陥落=人類史に燦然と輝く華々しい大事件ではなく、その裏には「悲しみ」があったことを強調するのが面白いと思います。1789の制作陣はフランス革命に対してどんな評価を下しているのか、非常に気になりますね。

憎しみが物語を駆動する

そしてフランス版1789を見てびっくりしたのは、「憎しみ」という感情が全面的に出ているところです。

宝塚版だと、ロナンの最初の動機は父親を殺されたことへの悲しみ、貴族への憎しみだったにしても、革命家と出会って思想に触れ、オランプと恋に落ちて……みたいな感じで、なんだかんだ結構キラキラ感があるじゃないですか。

でもフランス版では、キラキラ感よりも「憎しみ」がすごい。ロナンもそうだし、ソレーヌもそうです。「憎しみ」と「愛」のメタファーが後ろで踊っていても良いんじゃないか?っていうレベルです。そうなると完全にロミジュリになってしまいますが。

それから、ロナンはオランプのことを「あんなわがままな王妃に仕えているなんて、可哀想だ!一緒に革命をして王妃なんて倒しちゃおうぜ!」みたいな感じで接しているのが印象的でした。オランプは全然そんなこと思っていないので、ロナンの「みんなが貴族を憎んでいるはずだ」という思い込みが強調されていました。一方オランプはというと本当にただただロナンのことが好きなんだな〜という感じで、宝塚版とはちょっと違う印象だったかも。

おわりに

フランス版1789は、ストーリーは荒削りですが、その分、詩と音楽、ダンスの説得力が高いです。韻の踏み方もとても綺麗なのですが、日本語に翻訳するとこのニュアンスがなかなか出ないのが残念です。

宝塚・東宝版とは違った魅力があるので、皆様もぜひ見てみてください!

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