結局、ロナンを革命に向かわせたものは何だったのか

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私はロベスピエールが好きなので、細々と法律についても勉強しているのですが(といっても現在の日本の法律なので完全にロベピを擬似体験できるわけではない)、最近読んでいた民法の本にこんなことが書いてありました。

フランス人権宣言(1789年)は, 2条で所有権(広義の所有権=財産権)を自然権の1つとしてとりあげ, 17条で「神聖不可侵」の権利であると規定した。

千葉 恵美子, 藤原 正則, 七戸 克彦, 『民法 2 物権』(2018年, 有斐閣アルマ)p.18

所有権絶対の原則の意味を考える際に, とりわけ重要なことは, この考え方が封建的拘束からの自由を意味している点にある。フランス革命に代表される近代市民革命以前においても, 国王や封建領主だけが土地を支配していたのではなく, 農民にも土地の耕作権はあった。しかし, このような土地に対する所有関係は, 身分制による支配秩序と密接に結びつき, 農民は工作する土地に縛りつけられ, 国王や封建領主の政治的支配圏に服していた。このような封建的土地所有に対して, フランス人権宣言において明言された所有権絶対の原則は, 土地の直接の利用者に全面的な所有権を与え, 国王や封建領主による封建的負担から解放することを宣言したものといえる。

千葉 恵美子, 藤原 正則, 七戸 克彦, 『民法 2 物権』(2018年, 有斐閣アルマ)p.18pp.18-19

これらの記述からわかるのは、

・フランス革命が成し遂げた重要なことの一つは所有権を打ち立てたこと

・所有権=封建制度からの解放

ということです。

ちなみに、「フランス革命が成し遂げた重要なことの一つ」と迂遠な言い方をしているのは、おそらくフランス革命の発端はブルジョワが所有権を求めたこと(つまり直接的な原因は所有権にある)だとは思っているのですが、ここらへんはフランス革命研究史とも関わるところで、私はあまり詳しく追えていないので確信を持てないからです。フランス革命研究史についてはおいおいがっつりと勉強したいと思っています。

では、ここで1789のストーリーを考えてみましょう。

まず物語の冒頭は、ロナンたちが税金を支払えなかったために、ペイロールから土地を奪われそうになるところから始まります。この部分は、土地と封建制度の結びつきを表していると思われます。

ロナンたちが抵抗したために、結局父親が銃殺され、土地も奪われてしまいます。絶望したロナンは、パリへ向かうことにします。

ここで先程の引用の部分、「農民は工作する土地に縛りつけられ, 国王や封建領主の政治的支配圏に服していた」を思い出してみると、なかなか面白いですね。ロナンは土地を奪われたからこそ、土地から解放され、パリへ行くことができたのです。もしペイロールたちに土地を奪われていなかったら、彼が革命思想に触れるのはもっと後のことになっていたかもしれませんし、あるいは反革命勢力になっていた可能性もあります(ヴァンデの反乱のように)。

土地が国王に結びついていたために、ロナンは土地を奪われることになったものの、そのおかげでパリに行くことができて、革命思想に触れることができた。皮肉です。

そしてロナンが特権階級への憎しみを募らせるきっかけとなったのは、父親が殺されたこと&土地を奪われるようになったことなので、ロナンの目指すところはやはり所有権だったのではないかと考えることができます。しかし、革命家と出会ったあとにロナンがいうことといえば「人間の生きる意味」とか「自由・平等・博愛」といった、史実的には事後的に付された革命の意義ばかりのように思えます。個人の憎しみから、もっと公共的なことを考えられるようになったという「成長」と考えることもできなくはないですが、そもそもの苦しみの発端はどこにいった?と思ってしまいます。

確かに、ミュージカルで「所有権!所有権!!」などといっているのはなかなか想像できませんが、史実的には、身分を超えた恋愛よりも所有権の方が革命の直接的な原因だったのではないかな……と思います。

1789に描かれている恋愛観はロマン主義のそれだと思うので、この時代に「身分を超えて愛し合う!」と主張するのは若干の疑問があります。本当にこの時代にこういう価値観があったのかな?と思って、『恋愛制度、束縛の2500年史 古代ギリシャ・ローマから現代日本まで』を読んだのですが、フランス革命の時期については少ししか触れられていなかったような気が(うろ覚えなのでもう一度再読します)。

愛に対する価値観の変遷や、フランス版とも比較しながら、もう少しじっくり考えていきたいと思います。

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参考文献はこちら。

千葉 恵美子, 藤原 正則, 七戸 克彦(2018)『民法 2 物権』, 有斐閣アルマ.

私が引用したのは第3版なのですが、最新版は4版みたいです。

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