にしうら染の『踊る!アントワネットさま』を読んだ。
もともと著者の『フランスふらふら一人旅』が好きで、フランスを題材にした漫画を描かれているということは知っていたのだが、先日Xでジャコバン派のイラストまとめを目にしてフランス革命ものも描いていたことを知る。さらに著者のXを見ていくとひかりふる路とか1789とかに関するわかりみツイートが多々あり、もしかして私と趣味が似ている!?ということで即ポチったのがこちらの漫画。全2巻でさくっと読みやすい。
以下ネタバレ注意の感想。
主役は「マリー」という名前のマリー・アントワネットと同じ年の画家の卵。一人前の画家になるという夢を追いかけながらもときに落ち込み、恋愛や友情にも一生懸命だ。男爵家の娘で庶民的、アントワネットの髪型や浪費にツッコミをいれることもあり、現代人の気持ちも代弁するような親しみやすいキャラクターである。
アントワネットと同じ名前…というと、MAという同じイニシャルをもつ娘が主人公のミュージカル『マリー・アントワネット』が思い浮かんでしまうが、もちろんこの漫画にはアントワネットへの憎しみは出てこない。『マリー・アントワネット』ではアントワネットを憎んでいたマルグリットが革命に参加、ジャコバン派のスパイとしてアントワネットと生活をともにし、彼女の尊厳を踏みにじる裁判を目の当たりにして、友情とも同情ともいい難い感情にのまれていく姿を描いているが、こちらの漫画ではルソーの思想に共鳴しつつもアントワネットという友人、一人の人間に向き合う主人公の姿が描かれている。制度を批判すること、しかしその内部にいるのも一人の人間であるということ。フランス革命に限らず、このあたりは非常に難しいなあと改めて思った。
1巻はほのぼのベルサイユ編といった感じだが、2巻からは怒涛の展開。我らがロベスピエールも2巻から登場。最初はかつらを被っていない。妹シャルロットを思うがゆえに小言ばかりいってしまう様子がかわいい。アラスもしっかりでてくるのでびっくりした。ルソーが好きすぎるあまり読む用・保存用・布教用で3冊持っているという設定もウケた。
ロベスピエールは法による穏当な改革を夢みながらも、民衆の怒りとのはざまで急進派にならざるを得ず苦悩する姿が描かれており、著者がかなりピに好意的なことがうかがえた。ありがとうございます。サン=ジュストもちょっとだけ登場。ダントンやデムーランはいなかった。
結末はそうきたか!という感じ。本当にルイ=シャルルはかわいそうなので、カバー下を読んでこんな未来があったら良かったのにね…と思った。本編最後のセリフはすごく良かった。
印象的だったのはフェルセン。がっつりネタバレになるが、このフェルセンはアントワネットに恋しているのではなく、祖国のために利用しようと近づいてくる。ポリニャック夫人とも結託している。フランスに貸しを作ろうと革命後も王家の逃亡計画を立てるが、ルイ16世に魂胆を見抜かれ史実通り途中で離脱。アントワネットに恋しないフェルセンがいて良いんだ!と新鮮だった。
それからひたすら主人公マリーとアントワネットの友情を描くものだと思っていたら、けっこうラブコメだった。
絵柄はほんわかしていて可愛らしく、さくさく読める。フランス革命ってどんな感じ?とひとに聞かれたときに気軽におすすめしやすい一冊だと思った。

