1789ざっくり感想

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本日は1789のざっくり感想をお届けします。

登場人物の役作りが深められていた

今回の星組版ではロナンとオランプの恋愛が中心になったという事情もあるかと思いますが、今まで見たどのバージョンよりも、個々の登場人物の役作りが深まっているような気がしました。

特にロナンとオランプ!実は正直にいうと、今までのバージョンだと主役のはずのロナンとその恋人のオランプの性格をいまいち掴みかねてたんですよね……。どうしてもロベスピエールやアントワネットの方に感情移入してしまって。やはり歴史に残る人物ってそれだけ生き様が強烈なわけですから、一般の人々と比べるとどうしてもインパクトが強くなってしまうところがありますよね。

ロナン(礼真琴)

でも今回は、ロナンとオランプが1789で主役な意味がわかりました。ロナンはどこまでも、良い意味で普通の少年なんですよね。父親を殺されたら怒るし、向こう見ずな行動をしてしまうし(妹のソレーヌとの対比がとても良かった)、革命家たちの熱意に動かされてしまうし、どうしたら良いか迷うし。今回の1789のロナンは、迷える少年が葛藤しつつも成長し、1つの結論を出す、という成長物語に見えました。どこまでも良い意味で普通の少年だからこそ、私たちも共感できる。もし私たちがこの時代に生きていたら、どんな風に生きるだろう?と想像する余地を与えてくれる。そんな感じがしました。

オランプ(舞空瞳)

そしてオランプは、どこまでも信念のある女性です。ロナンは最初は革命思想を知らず、父親を殺されたという憎しみからパリに出てくるわけですが、オランプには最初からアントワネットへの忠誠心があります。けれど、ロナンと出会って迷いが生じる。でもオランプの中では軸がぶれていないんですよね。どこまでもアントワネットへの忠誠心は変わっていないし、ロナンが「これが身分違いの恋なのか!」といっても、「思いが違うのよ」と反論する。確かに、オランプの忠誠心の対象がたまたま王妃のアントワネットだったというだけで、現代に文脈を置き換えても理解可能です。恋人のことは好きだけど、それでも仕事も生きがいだからやめられない、みたいな(個人的な感想です)。

実は、これまでのバージョンを見ていたときに感じていたのは、「オランプは結局何を考えているんだ?」ということだったんです。オランプってどこか革命から距離をとっているというか、どこまでもただ1人の人間のことを考えた行動が多いように見えませんか?自分の代わりに牢獄に入ったことに申し訳なさを感じてロナンを救い出すとか、子どもが亡くなって悲しみにくれるアントワネットのそばにいたい、とか。オランプの中では身分は関係なくて、ただその人を愛しているから、その人のために何かをしたい、という感じなのかなと思います。どうしても1789は平民vs貴族、聖職者という構造になってしまいがちですが、だからこそこうやって誰かがある身分だから愛するのではなく、その人がその人だから愛する、ということのできるオランプという人物が必要なのだと思いました。こんなことを思ったのは、今回が初めてです。なこちゃんのオランプだからこそこう思えたんだろうなあ。

革命家たち(暁千星、天華えま、極美慎)

このお三方もそれぞれキャラが立っていましたね!扇動的なことを言いつつも、実際には優しくてどこか気弱なところもあるカミーユ(デムーランのことです。私はカミーユ呼びしてます)、享楽的だけど、全体を見渡して統率する器の広さを持ち合わせているダントン、そしてどこまでも高い理想を持ち、1人だけ孤独なまでに突き抜けてしまっているロベスピエール。それぞれがそれぞれのキャラクターを引き立たせていて、本当に最高でした。この3人が平民議員の姿をしているのが胸熱でしたね……。史実的にはこの時点ではカミーユとダントンは議員じゃないんですけどね。ちなみにいうと、史実的にはロベスピエールはバスティーユ陥落にも参加していないし(後でこのニュースを知って、人民の歴史を変える偉大な第一歩だ!とめちゃくちゃ喜んだというエピソードはある)。

ロベスピエールは1人だけどこか違うんですよね。極美慎くん、全身(特に眼差し)でそんな孤独なロベスピエールの姿を表現していてかなりぐっときました。カミーユはどこか可愛げがあって、ダントンは色気と暑くるしさの絶妙なバランス。

東宝版ではロベスピエールとカミーユ、2人とも帽子をかぶっていたと思うのですが、なんで今回は帽子をかぶってるのカミーユだけなんだろ。

SNSで感想を漁った感じ、とにかくデムーランはみんなを引っ張っていってかっこいい!という意見をたくさん見かけました。実際、宝塚版の1789ではカミーユがこの3人の代表格みたいなところがありますよね(配役的にも)。でも私は『小説フランス革命』や映画『ダントン』でのカミーユのイメージがどうしても抜けないので、カミーユはこの3人のなかで一番気弱な面があるからこそ、こういう思い切ったことができる、という印象があります。ありちゃんカミーユにはところどころ、このカミーユの弱々しさが垣間見られた気がしました。私の妄想かな……。

王族たち(有沙瞳、瀬央ゆりあ、ひろ香祐)

いやー最高でしたね。愛希れいかアントワネットは「どこまでも楽しいことがだーいすき♡」みたいな感じの印象を受けたのですが、冒頭の有沙瞳アントワネットは無邪気で、子どもで、とにかく退屈なことは嫌!という可愛らしい印象を受けました。だからこそ、最後は圧巻でしたね。『ロミオとジュリエット』の乳母を思い出してしまいました。アントワネットが王妃としての務めに目覚めるシーンは、有沙瞳の独壇場でしたね。

そして瀬央ゆりあアルトワ伯!!こんなアルトワ伯、今までに見たことあった??これまでのバージョンのアルトワ伯が妖艶さ(美弥るりか)、1人だけ異世界の住民でどこかコメディちっく(吉野圭吾)と妖しい魅力路線だったのですが、せおっちアルトワ伯はどこまでも悪役、それなのに可愛らしさもあるという不思議な魅力!そして強烈!!

ひろ香祐ルイ16世は、どこまでも優しいけど不器用な感じがしました。アントワネットに対しても、国民に対しても。「フランスを代表するのは余1人だ」というセリフは、傲慢にも聞こえてしまうと思いますが、ひろ香祐ルイ16世の場合は「だから自分1人が国民に対して責任を負わなければならないし、守らなければならない」という優しさのようにも感じました。

最初から国王としての責務を感じているけれど、うまく政治を動かせないルイ16世、最初は自分のことばかり考えていたのに徐々に社会的任務に気づき、覚醒していくアントワネット、とにかく自分の思い通りにしたいから国王になりたいアルトワ伯。一口に王族といっても、立場は様々です。そんな3人の個性がよく出ていました。

細部も丁寧、そして全体の調和も素晴らしい

このように、登場人物1人1人の個性が際立っていて細部まで丁寧に作り込まれていたという印象を受けた今回の1789ですが、全体としても調和していて最高でした。私は月組版も東宝版ももう数えきれないほど見ているのに、「これまで一体何を見ていたんだ?」と思うほど、今回の星組版1789は私のこの作品に対するイメージを更新してくれました。これまでは映像でしか見ていなかったからということもあるかもしれません。映像だと視線が固定されてしまっているので、ある意味撮影者の意図したところしか見れないんですよね。

1789は平民として虐げられていた民衆が立ち上がるというストーリーで、どうしても身分の闘争を描くことになってしまいます。しかし1789が優れているのは、プログラムで小池先生もいっていましたが、貴族に対しても、革命家に対しても、そして民衆に対しても、絶妙な距離感をとっていることです。

革命家たちは「みんな平等だ」と言います。でもここでの「みんな」は平民のことですよね。当たり前です、だって民衆が虐げられていて、だからこそ平民の権利を勝ち取りたいのですから。

でも本当は、革命家たちの憎む貴族や王だって人間のはず。人間の悲しみや苦しみは、比べることができないものだと思います。ロナンの父親を亡くしたという悲しみ、飢えていたという苦しさ。革命家たちの、ブルジョワだからこそ手を差し伸べたい、けれどロナンたちの苦しみはわからないというもやもや。アントワネットの、人生を謳歌したい、与えられた境遇に押しつぶされたくないという叫び、息子を亡くした悲しみ。今にも飢えかけている民衆からすれば、革命家たちの悩みも、アントワネットの悩みも、裕福なものたちのお遊びに見えるはずです。でも当の本人たちは本気で悩んでいて、そこに貴賎はないはずだと思います。

ロナンとアントワネットは身分も境遇も、そして至った経緯も違うけれど、2人とも肉親を亡くし、身分違いの恋愛に苦しんでいます。愛や悲しみ、苦しみといった人間の普遍的な感情を描くことで、身分をめぐる闘争にも距離を置いているような印象を受けました。

ここまで書いていて思ったのですが、1789はブルジョワと平民の連帯(革命の兄弟)を描いているし、家族愛や恋愛も描いているのですが、やっぱりヘテロ・ロマンチックラブイデオロギーが強いですね。うーん。ちょっとこの点についてはもっとじっくり考えないといけないと思います。

おわりに

ざっくり、というわりに長くなってしまいましたが、今回の感想はここまでです。

まだまだ全然語りきれてません!これからキャスト別感想、月組・東宝からの変更点、その他考えたことなどに続きます!

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神!!!舞台写真は売り切れ続出なので、ぜひこちらを!!

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とりあえず、まずは一冊読んで欲しい『小説フランス革命』。1789をまた違った視点から見れるはずです!

多分、私が一番推している映画。1789のその後、革命家3人が決裂していく様子が描かれています。

絶望に突き落とされてください!

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