もうすぐ博多座でミーマイが上演されますが、興味深い論文を見つけたのでシェアします。
三上雅子さんの「恋する男と行動する女 : 宝塚歌劇における男性像」(2011年『表現文化』6: 41-55)です。
本文はこちらから↓
http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/cpr/arts/contents/repre/no6/041-055_mikami.pdf
要約
私なりに簡単に要約するとこんな感じになります:
『エリザベート』はベルばらと同じくらい人気演目。でもなんでオリジナル作品じゃなくて海外のミュージカルが宝塚で人気になるの?まあ、『エリザベート』の場合はウィーン版が大きく改変されて、豪華な舞台にキャッチーな音楽、そしてトートとエリザベートの恋愛が主軸になっているから、宝塚でウケるのはわかる。でもこれだと宝塚のオリジナル演目とそんなに変わらない。『エリザベート』はもっと絶大な人気を誇っているように見えるが、それはなぜか?
実は、『ミー&マイガール』を見るとこの理由がわかる。『ミー&マイガール』も『エリザベート』と同じくらい人気を博した演目である。イギリスの階級社会を知らない日本人観客にミーマイが受けた理由は、なんといっても主人公ビルの魅力。ビルは悩まない、快活な男性。彼の行動はすべて「愛するサリーと一緒にいるため」であり、どこまでも恋する男である。一方、サリーは悩む。身分の差を考え、一時は身を引こうとするものの、最終的には自分も上流階級の仲間入りをしようと教育を受けることにする。
『ミー&マイガール』で描かれるのは「恋する男と葛藤しつつ行動する女の恋愛物語」であり、これは『エリザベート』にも共通する。日本版『エリザベート』のトートは、エリザベートに愛されるために陰で歴史を操っている。トートもビルと同じように、基本的な行動原理は「愛する女性と一緒になりたい」ということである。また、エリザベートもサリーと同じように、現実との折り合いで悩み、葛藤する。この点で『ミー&マイガール』と『エリザベート』は共通しており、さらに言えば、「恋する男と葛藤しつつ行動する女の恋愛物語」が、現在(といっても論文執筆当時ですが)の宝塚ファンの欲する物語なのかもしれない。
というような内容です。詳しい内容が気になる方はぜひ本文を読んでみてください。
感想
以下、私の感想です。
ミーマイはコメディで笑える要素がたくさんあるけど、エリザベートはシリアス。全然違う作風の話だと思っていたけれど、まさかこんな共通点をあぶりだすことができるとは!ビルとトートが似ているという発想はなかった。確かに、ミーマイもエリザベートもかなり特有の政治・社会状況ありきの作品だけど、宝塚では政治的要素が背景と化している。1789の考察にもこの論点が役立つだろうか?
『エリザベート』では、トートとエリザベートを取り合うことになるフランツが2番手にならなくてはいけないという指摘にも納得。確かにそう考えると『1789』でアルトワ伯が2番手なのも辻褄が合うのか?一応オランプを取り合ってるもんね……。しかし同じ小池先生作品で考えると『カジノ・ロワイヤル』の三角関係はトップスター、娘役、3番手だったような。フランス版1789を見ていると、これは完全に2番手がペイロールじゃんと思うのだが、『カジノ・ロワイヤル』的な感じでトップスター=ロナンと3番手=アルトワ伯がトップ娘役=オランプを取り合いつつ、悪役2番手=ペイロールと対決する、というのもアリなんだろうか?
また、この論文が出版されたのは2011年と、今から10年以上前。その後宝塚では新たな演出家が生まれているし、この著者が心配するような事態は起こらなかった(近年ではエリザベートはトップ娘役によって演じられている)ので、だいぶ状況が変わったかもしれない。今年ミーマイが上演され、またおそらく数年以内にエリザベートが上演されると思うが、この2つを比較すると最新の宝塚の傾向がわかって面白いかもしれない。
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花組版!次回の星組ではジャッキーを誰が演じるのか、そわそわしてます。
こちらも花組!明日海りおさんはトートとビルの両方を演じたんですね。ありちゃんも新人公演ではトートを演じているので、ビルとトートどちらも演じたということになるのか。
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