『応天の門』予習:菅原道真①文章生の頃

月夜に梅花を見る宝塚作品考察

月組公演『応天の門』の予習として、れいこさん(月城かなと)演じる菅原道真について紹介します。

本当は一つの記事にまとめる予定だったのですが、道真の人生が想像以上に濃くて長文になってしまったので、いくつかの回にわけることにしました。初回の今回は、『応天の門』でも描かれている、道真の若かりし頃についてご紹介します!

※今回の記事は以下の本を参考にして書いています。中古しか流通していないようですが、菅原道真の人生がコンパクトにまとまっている&当時の政治制度についてもわかりやすく解説されていてとても満足度が高かったです。おすすめの本です!

幼少期

845年、三男として生まれる

菅原道真は845(承和12)年のある日に是善の三男として生まれました。道真の家系は代々学者で、祖父の清公は最澄とともに唐に渡っています。道真は父の是善が文章博士に就任した年に生まれました(平田, 2000, pp.33-34)。

幼名は阿古あこ、あるいは阿呼。字は「菅三」、唐風に「かんざん」と呼びます。自ら唐風に、「菅道真」(かんどうしん)と名乗っていたこともあるらしいです(平田, 2000, p.35)。『応天の門』でも描かれていますが、このくらい道真は唐に憧れていたのですね。

幼少期の道真の風貌について気になる文章が。

幼いころは健康にめぐまれず、身長も低かったらしい。今日残っている多くの画像の中では、京都の北野天満宮所蔵の肖像画が道真にもっとも近いともいわれているが(扉の肖像画)、前近代の歴史的人物同様に確かめるすべはない。

平田, 2000, pp.35-36

あながち『応天の門』の道真のビジュアルも間違ってはいないということですね!

道真は幼少期からその才能を発揮します。11歳のときにはすでに「月の夜に梅花を見る」という詩を作っていました。

15歳で元服、結婚

15歳になり元服すると、五歳年下(当時10歳)の宣来子のぶきこと結婚します。宣来子は、道真の父の私塾の門人、島田忠臣の娘です。道真は島田に詩作を習っていたようです。

学問の道へ

道真は父の私塾で学び、弱冠18歳で文章生の試験に合格します。さらに23歳のときには、20人の文章生の中でも特に優秀な人物が選ばれる文章得業生に合格。ちなみにこの頃にはもうすでに子供がいたようです(平田, 2000, p.42)。方略式と呼ばれる、議政官になるために最高の国家試験を受ける資格を得、26歳で見事方略式(「対策」とも呼ばれる)にも合格しました。

文章生とは

「もんじょうしょう」と読みます。官僚育成機関である、「大学寮」で中国史や漢文学を学ぶ学生のことを指します。教官のことを「文章博士」と呼びます。

ちなみに、彩海せらさん演じる紀長谷雄(845-912)が文章生となったのは876年のこと、32歳のときでした。さらに881年に文章得業生に合格、883年に方略式に合格します。

『応天の門』では少しぬけていて親近感のもてるキャラクターでしたが、紀長谷雄も相当優秀だったんですね……!まあ菅原道真と在原業平とかいう天才二人が周りにいたらどんなに優秀なひとでもああいうキャラクターになってしまいそうです。

官僚の道へ

その後の人生を駆け足で紹介しますと、871年に中央官僚となり、874年には従五位下となって貴族の仲間入りを果たしました。877年には33歳で文章博士(当時の定員は2人)となりました。

ちなみに、道真には子どもが23人いたという説と、14人いたという説があるそうです(平田, 2000, p.42-43)。子孫の多くも文章博士となったようで、エリート一家であったことがうかがえます。側室が複数いたようですが、名前等の情報は残っていません。

道真に嫉妬した都良香

都良香(834-879)は、道真が方略式を受験したときに問答博士(試験官のようなもの)を務めていました。ちなみに都が出した問題は「氏族を明らかにせよ」「地震を弁ぜよ」の2問で、彼の漢詩文集『都氏文集』に収められています(平田, 2000, p.37)。これに対する道真の答案は『菅家文章』巻7に収められていますが、道真は「中の上」という成績で合格しました。ちなみに長谷雄も「中の上」で合格しています。成績は上上から下下までの9つのランクに分けられていましたが、上(上上、上中、上下)を取るひとはほとんどおらず、みな同じような成績で合格していたようです(平田, 2000, p.38)。しかしながら道真はこの成績に不満を抱いていました。

道真は877年10月、33歳で文章博士となります。当時の文章博士の定員は2人で、もう1人の文章博士こそが都良香でした。道真は、さらに2年後の879年には従五位上となり、11歳年上の都よりも昇進してしまいました。都はこれにかなりショックを受けたようです。都はその1ヶ月後に世を去りました。

おわりに

月組の『応天の門』は副題に「若き日の菅原道真の事」と書いてある通り、まだ政治家になる前、文章生として生活していた頃の道真の姿が描かれます。

この本によると、文章生の頃の道真についてはあまり資料が残っていないようです。記述も少なめでした。でもだからこそ妄想のしがいがあるというものですよね!

次回は、政治家として栄華を極める道真についてご紹介していきたいと思います。次回をお楽しみに〜!

参考文献

 平田耿二(2000)『消された政治家・菅原道真』 東京:文藝春秋.

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