私は『ひかりふる路』がめちゃくちゃ好きなのですが(詳しくはこちらの記事)、一つだけ物申すとしたら(恐れ多いですが)何か……ということを考えてみました。
『ひかりふる路』については、トップのお披露目演目にはふさわしくないとか、そもそも恐怖政治の主導者たるロベスピエールを主役に据えるのがどうしても我慢できないとか、登場人物に感情移入できないとか、様々な批判もあるようなのですが、私個人としては女性革命家たちの描き方に疑問があります。
『ひかりふる路』の女性革命家たち
『ひかりふる路』にはたくさんの女性革命家が登場します。作中で登場する実在した女性革命家は、
オランプ(舞咲 りん)
クレール(早花 まこ)
テロワーニュ(沙月 愛奈)
ポーリーヌ(千風 カレン)
マノン・ロラン夫人(彩凪 翔)
の5人です。ロラン夫人はめちゃくちゃ出番が多いのと、立ち位置的には他の4人の女性革命家とは一線を画していますが。
そして、このロラン夫人以外の4人の女性革命家たちが高らかに女性の政治参加・自立を謳うシーンがあります。そう、「パリの女たち」のシーンです。
このシーン、娘役さんたちが生き生きとしていてとても良いシーンだと思います。ですが、そのあと彼女たちが前に出てくる場面はほとんどありません。物語の筋とあまり関係ないというか、とってつけた感が否めません(小声)。「フランス革命期には活躍していた女性革命家たちもいたんだよ!!」というメッセージにはなるとは思うのですが、正直これだったら別にこのシーンはなくても良いのでは……と思ってしまいました。娘役さんたちが活躍する場面は大好きなのですが、全体的に見るとうーん……役をつけるためだけにこのシーンを作ったのかな……と邪推してしまいます。
では、もしこのシーンが娘役により多くの役を与えるために作られたシーンだとしたら、と仮定して、少し妄想を膨らませてみます。もし娘役に役を割り振りたいのであれば、いるじゃないですか! 適任の人物たちが!!!
それはエリザベート・デュプレとアンリエット・ルバです!
誰それ?となっているひとのために解説を。エリザベート・デュプレはロベスピエールの下宿先のデュプレ家の娘で、エレオノール・デュプレの妹です。エレオノールは『ひかりふる路』にも出てきていて、星南のぞみさんが演じていました。作中ではエレオノールはロベスピエールに秘かに思いを寄せていて、革命に邁進するロベスピエールがいつか振り向いてくれる日を願う……という健気なシーンがあるのですが、正直そこくらいしか目立った出番はありませんでした。もう少しエレオノールとロベスピエールの関係も描いてくれても良かったのにな〜と思います。
このエリザベートですが、史実ではルバの結婚相手で、子どももいます。一応書いておくと、作中ではルバは永久輝せあさんが演じていましたね。
このルバの妹がアンリエット・ルバであり、なんと彼女はサン=ジュストの婚約者だったのです!(実際にはその後婚約破棄となるようですが)。
デュプレ家の姉のエリザベートはロベスピエールの内縁の妻と噂されており、彼女の妹のエリザベートはルバと結婚、そしてそのルバの妹のアンリエットはサン=ジュストと婚約。すごくないですか……? ロベスピエールとサン=ジュストがそれぞれ結婚してしまえば、この三人のジャコバン派議員たちは親戚、ということになるわけです。というかそれが目的でこんなことに?とも想像してしまうんですが、改めて書いてみるとやはりすごい……。
ロマン・ロランの『ロベスピエール』という作品ではエリザベート、エレオノール、アンリエットの三人が会話する場面があるのですが、革命に邁進する男たちに対するそれぞれの思いが語られていて最高。こういうシーンが『ひかりふる路』でもあったらもっと良かったな〜とか思うんですが、さすがにそれは欲張りすぎでしょうか??
『1789』の女性たち
フランス革命を扱ったミュージカルといえばもう一つ、『1789—バスティーユの恋人たち—』がありますね。2015年に月組で上演されたフレンチミュージカルです。
宝塚版ではカットされていたのですが、この『1789』にも女性が革命に参加する様子を描いたシーンがあります。「Je veux le monde」というナンバーにのせて、パリの女たちがパンを求めて立ち上がるという、後のベルサイユ行進をも彷彿とさせる場面です。東宝版ではソニンさん演じるソレーヌが中心となって全身全霊で歌い踊る迫力満点のシーンでした。(ちなみに宝塚版では「Je veux le monde」は「世界を我らに」というタイトルで、かちゃ(凪七瑠海)演じるデムーランが民衆に蜂起を促す、といったようなシーンに変更されていました。娘役が演じるにはあまりにも強すぎるシーンだったから変更されたのでしょうか……?)
しかしこの場面も、正直??となってしまうんですよね。女たちが立ち上がり、パン屋を襲撃するのですが、結局騒ぎを聞きつけたダントンたちがやってきて「弱いもの同士でいがみあうのはやめろ」と諌められて終わるという……。そしてダントンたち、つまり男たちが議会でどうにか貧困を解決することを約束し、女たちとパン屋の男たちは仲直り。
まあ至極まっとうな結末といえばそうなのですが、うーん、これ結局女性は無力だしときとして誤った行動に出る、みたいな解釈もできませんか?? 確かにこの当時女性には参政権ないし、ベルサイユ行進もあったし、こういう描き方をするのは史実通りといわれれば返す言葉もないのですが、もう少しなんとかならなかったかなあ……と思います。
『ベルサイユのばら』のオスカルは……?
私は『ベルサイユのばら』がめちゃくちゃ好きなんですが、これに関しても少し思うところがあります。高校生の頃の私はもう盲目的にこの作品が好きだったんですけど、大学に入ってジェンダー・スタディーズに触れるようになってから、少し批判的にこの作品を見ることができるようになりました。そこで気づいたのが、オスカルのホモフォビア的態度と、結局は異性愛規範に回収されてしまう、という点です。女性の性を描いたという点では画期的だったと思うのですが、結局ロマンチックラブイデオロギーに収斂されてしまうのか……と思ってしまうときがあります。まあそれも2020年代を生きる人間だから思ってしまうことで、この作品が掲載された当時の状況を思えば、『ベルサイユのばら』が読者の少女たちに与えたインパクトはすさまじいもので、フェミニズムへの功績は偉大だと思います。こういう先人たちの奮闘があるからこそ現代に生きる私がこのような感想を抱けるわけですし。それに、ここでは少し批判めいたことを言いましたがやっぱり『ベルサイユのばら』は大好きで、人生を変えた本を5冊挙げよと言われたら確実に入ってきますからね。
あと、女性が主役といえば『マリー・アントワネット』も挙げられるかなと思うのですが、実はまだみたことがないんですよね(原作小説は読んだことあるけどかなり昔なのでほとんど内容覚えてない……)。こちらではどんな風に女性が描かれているのか楽しみです。
女性が主役のフランス革命ものがみたい
今まで読んだ/見たフランス革命ものの作品のなかで、女性の登場人物に対して「これは納得!」と思えたものが全然ないんですよね(小声)。ちょい役じゃなくて、恋愛にも回収されなくて、っていう……そういう話が見てみたいです。もしご存知の方がいたら教えてください!
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