『うたかたの恋』予習:ジャン・サルヴァドルとフェルディナンド大公

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こんにちは。無事『うたかたの恋』開幕しましたね!毎日厳しい寒さですが、関係者の方々には体調に気をつけながらこのまま頑張ってほしいです。

さて、本日は『うたかたの恋』の登場人物を史実から探っていきたいと思います。宝塚ファンの皆様なら、ルドルフやフランツ・ヨーゼフ一世、エリザベートについてはもうこれ以上ないくらいご存じのはず。ということで、今回は『エリザベート』には登場しない人物を2人紹介したいと思います!

ちなみにルドルフとマリーの恋の真相についてはこちらの記事にまとめました↓


マリーの遺体を掘り起こしたヤバいファンがいるらしいです!以下の記事参照↓

ジャン・サルヴァドル

まず、マイティー(水美舞斗)演じるジャン・サルヴァドル。

宝塚歌劇団公式ホームページの人物相関図によると、彼はルドルフのいとこであり親友、そして自由主義者。

実は私、この人物を探すのに結構苦労しました(汗)。「ジャン・サルヴァドル」でググっても全然出てこないじゃん……誰??となりながら探したのですが、どうやら彼の本当(?)の名前は

ヨハン・ザルヴァトール・フォン・エスターライヒ=トスカーナ

というそう。「ヨハン」というのはドイツ語で、フランス語だと「ジャン」になるんですね。

さて、ではこの人物がどんな人物か探っていきましょう。

ヨハン・ザルヴァトール・フォン・エスターライヒ=トスカーナ

(Johann Salvator von Österreich-Toskana, 1852-1890?)

ヨハン・ザルヴァトールは、トスカーナ大公レオポルド2世と、ナポリ・シチリア島のマリア・アントニエとの間に末っ子として生まれました。

1865年から軍人としてのキャリアを歩み始めましたが、1889年には皇室から離脱。ヨハン・オルト(Johann Orth)と名乗った彼は同じ年にウィーン宮廷歌劇場のダンサー、リュドミラ “ミリー “シュトゥーベル(Ludmilla “Milli” Stubel, 1852-90?)と結婚します。今回の花組公演では星空美咲さんがミリー・シュトゥーベルを演じていますね。

その後は船長の免許を取得し、ミリーと他の乗組員たちとともにロンドンを出発。1890年7月に嵐に遭い、船は沈没したといわれています。彼は依然として行方不明のままですが、1911年には死亡宣告されたそう。

宝塚でも描かれている通り、彼は自由主義者として知られており、「Die österreichisch-ungarische Monarchie in Wort und Bild」(『言葉と絵で見るオーストリア・ハンガリー君主制』)という本も著しました。

また、「ヨハン・トラヴァルト(Johann Traunwald)」という仮名を使って作曲活動もしていたとか。彼の作ったワルツはヨハン・シュトラウスの指揮によって演奏されたこともあったらしいです。

IMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト。主にパブリックドメインになった楽譜が掲載されている)というサイトには、彼の作曲したワルツのスコアが掲載されています。

掲載されているのは「Gruß an Linz」と「Stimmen aus dem Süden」の二曲。興味のある方はぜひ見てみてください。こちらから見ることができます↓

Category:Salvator von Österreich-Toskana, Johann - IMSLP

ちなみに彼の実際の顔はwikipediaに載ってます(肖像画ですけど)。

日本語版だとこんな感じ↓。なんだか威厳がありますね。

ヨハン・サルヴァトール・フォン・エスターライヒ=トスカーナ - Wikipedia

ドイツ語版だと若い頃の肖像画が載ってます↓

Johann Salvator von Österreich-Toskana – Wikipedia

フェルディナンド大公

続いて、ひとこちゃん(永久輝せあ)演じるフェルディナンド大公について。

フランツ・フェルディナント・フォン・ハプスブルク=ロートリンゲン

(Franz Ferdinand von Habsburg-Lothringen, 1863-1914)

フランツ・フェルディナントは、カール・ルートヴィヒ大公とマリア・アンヌンツィアータの長男として生まれました。フランツ・ヨーゼフ1世の甥、ルドルフのいとこにあたります。

フランツ・フェルディナントもヨハン・ザルヴァトールと同じく軍人で、順調にキャリアを進めていきます。

しかし、若干難しい性格の持ち主だったとか。『「うたかたの恋」の真実 – ハプスブルク皇太子心中事件』という本の中で、著者の仲晃は以下のように彼を描写しています。

といっても、ウィーンの一般市民、さらには二重帝国を構成する隣のハンガリー国王にも人気があり、一種のカリスマ性すら帯びていたルードルフに比べると、こちらは人付き合いが悪く、病的なまでに気が短い上に、他人を疑いやすいなど、人間的な魅力がほとんどなかった。

仲晃, 2005, p.230-231

仲晃さん、かなり辛辣ですね……。しかしフランツ・フェルディナントは「ルドルフとは正反対のしぶとさ、つまり性格的な強靭さ」を持っていたとも書かれています(仲晃, 2005, p.230-231)。

仲(敬称略)は、フランツ・フェルディナントは人生において3つの試練に直面したと述べています。

まず一つ目の試練は病気。彼は若い頃に結核(当時は不治の病とされていた)に罹患。ルドルフが亡くなり、フランツ・ヨーゼフ帝が後継者選びを始めた頃にはまだ病に伏せっていました。しかしそこから奇跡的な回復を遂げウィーンに帰還。フランツ・フェルディナントの父であるカール・ルートヴィヒが後継者と目されていましたが、カール・ルートヴィヒがチフスにかかって亡くなったため、長男であるフランツ・フェルディナントが皇位継承者となりました。

二つ目の試練は皆さんご存知、身分違いの恋です。フランツ・フェルディナントは、1894年にプラハの舞踏会で出会ったゾフィー・ホテク(Sophie Chotek, 1868-1914)と恋に落ちます。今回の上演では美羽愛さんがゾフィーを演じています。ゾフィーは伯爵家出身ではありましたが、王家の人間と結婚できるほどの身分とはいえません。

フランツ・ヨーゼフ帝は、「ゾフィーと結婚するのであれば皇位継承権を捨てよ」とフランツ・フェルディナントに迫ります。すると彼は、「ゾフィーがいないと帝王としての義務を果たせない」(要約)と反論。しかも、他の政治家を介して「マイヤーリンクの悲劇をもう一度繰り返すことになっても良いのか」と、半ば脅しともとれる文句をフランツ・ヨーゼフ帝に伝えます(仲晃, 2005, p.236-237)。

そして結局、フランツ・ヨーゼフ帝が折れるかたちで二人は結婚します。ゾフィーが皇族としての特権を放棄すること、二人の間に生まれる子供に帝位を継がせないこと、という条件つきではありましたが、二人はなんとか恋を実らせたのです。

そして最後の試練。それがサラエボでの暗殺です。1914年6月28日、フランツ・フェルディナントはゾフィーと共に、皇帝の名代として共同統治国ボスニア・ヘルツェゴヴィナの首府サラエヴォの軍事演習視察に出かけました。この「6月28日」というのは、フランツ・フェルディナントにとって重要な意味をもつ日でした。奇しくも、1900年の同日には、フランツ・ヨーゼフ帝の命令に従ってゾフィーとの間に生まれてくる子どもたちの帝位継承権を放棄することを誓う儀式を行っていたのです。そのため、彼にとって6月28日は「屈辱の記念日」でもありました(仲晃, 2005, p.275)。

オーストリアの隣国セルビアは、1908年にオーストリアがボスニアとヘルツェゴヴィナを併合したことに怒っていました。そのため、もしフランツ・フェルディナントがサラエボに行けば、セルビアの民族主義者たちが彼を暗殺をするのではないか……という噂が飛び交っていました。フランツ・フェルディナントを好ましく思っていなかったフランツ・ヨーゼフ帝ですら、彼のサラエボ行きに難色を示しました。

しかしフランツ・フェルディナントは周囲の反対を気にもとめずサラエボ行きを決行。なぜ彼は危険を顧みずサラエボへ向かったのか?

その理由の一つは、彼の政治的思想にあります。彼は、オーストリア・ハンガリー・南スラブの「三重帝国」の建設を夢見てたのです(仲晃, 2005, p.280)。

そしてもう一つの理由は、フランツ・フェルディナントの、妻ゾフィーへの愛情にあります。前述した通り、二人はどうにか結婚まではこぎつけたものの、ゾフィーには皇后としての地位が認められていませんでした。そこでフランツ・フェルディナントは、ゾフィーと共に「皇帝の名代」としてサラエボを訪問することで彼女の社会的地位を引き上げることを狙っていたのです(仲晃, 2005, p.281)。

そして運命のときはやってきました。1914年6月28日午前10時、二人は市長主催の歓迎レセプションに出席するため、車に乗ってサラエボ市内へと向かっていました。すると一人の若者が車に向かって爆弾を投げつけたのです。その爆弾は車の下で爆発し、フランツ・フェルディナンド夫妻は無事でしたが、数人の負傷者が出ました。

この事件を受け、フランツ・フェルディナンド夫妻は予定されていた行事をキャンセルすることにしたものの、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ総督邸で開かれる昼食会には参加することにしました。その道中で、先ほど負傷した人々を見舞うため市内の病院に立ち寄ることを決定。

しかし、この変更は運転手に伝えられていませんでした。途中で行き先変更を知った運転手は車を停止させ、方向転換をしようとしました。そこへ偶然やってきたのが、先ほど爆弾を投げつけた青年の仲間であるガヴリロ・プリンツィプでした。彼は目の前にいるのがフランツ・フェルディナンド夫妻であることに気づくと拳銃を取り出し発射。銃弾は夫妻に命中し、ゾフィーはフランツ・フェルディナンドにもたれかかります。フランツ・フェルディナンドは「死なないでくれ!」とゾフィーを抱きしめながら呼びかけますが、この頃にはもうフランツ・フェルディナンドも瀕死の状態でした。数分後にフェルディナンドが亡くなり、ついでゾフィーも息絶えました。

おわりに

今回は、水美舞斗演じるジャン・サルヴァドルと永久輝せあ演じるフェルディナンド大公をご紹介しました。

ルドルフとマリー、ジャン・サルヴァドルとミリー、フランツ・フェルディナンドとゾフィー。身分違いの恋に落ちた三組のカップルはみな、悲劇的な死を遂げます。

今回の花組での再演にあたっては、フランツ・フェルディナンドの出番が大幅に増えたと聞いています。私はまだ観劇できていないのですが、今回の再演ではどのようにこの3組の恋模様が描かれているのか楽しみです。

史実を知れば、さらに『うたかたの恋』を楽しめるはず。今回の記事が、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

参考文献

仲晃(2005)『「うたかたの恋」の真実 – ハプスブルク皇太子心中事件』東京:青灯社.

2023年3月1日追記:楽天でもamazonでも在庫あります!ただ、楽天の方が安そうです。

2023年2月10日追記:楽天だとメーカー取り寄せ可能になっています。先日入荷されてから即売り切れになったので良かった……!

2023年1月31日追記:楽天での在庫、残り一冊になってます……!購入予定の方はお早めに!

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2023年1月27日追記:楽天では掲載終了、amazonでは新品は入荷未定ですが中古が何冊かあります、、、!売り切れないうちに急げ!以下はamazonのリンク。


「うたかたの恋」の真実―ハプスブルク皇太子心中事件

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